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大家族マミラリアついに崩壊?

 分子生物学的手法によりMammillariaレードの分類を再検討した論文です.TAXON 70(2):308-323, 2021.アリゾナ州立大学Breslinらの最新の論文です.近縁種を中心の88種をサンプルとして色素体のLSC(単一領域)を次世代シーケンサーを用いて解析し,得られたデータをもとに解析し高解像度系統樹を作成したもののようです.
マミ分類①2022
 下の図が示すようにMammillaria, Coryphanntha, Cochemieaの3つのクレードに分かれるというものです.特徴からはそれぞれ直刺でイボに溝を持たず乳液を出すMammillaria,直刺でイボに溝を持ち乳液を出さないCoryphanntha,カギ刺でイボに溝を持たず乳液を出さないCochemieaとも言えます.Coryphannthaクレードには元のマミラリアの一部,エスコバリア属などが含まれますが,なお検討の余地がありそうです.著者らは特にCochemieaクレードを属として扱うことを主張しており,ここには多くの元マミラリアの種,ネオロイディア,オルテゴカクタスが含まれます.もしこのCochemieaクレードを属として認めないとすれば,とりうる手段は全てをマミラリア属とすることで,従前のコリファンタを含めるという形態的特徴からも受け入れ難い選択になります.
マミ分類②2022
 さてこの結果を受け入れるとマミラリアは少し小さな属になりますね.まあ,こんなことは目の前のわが愛すべきマミラリアたちにはどうでも良いことです.ボクも当分の間はマミラリア等の属名を今までと同様の定義で使用してゆくつもりです.それはさておき,ほう!と思ったのはM.senilis(月宮殿)がMammillariaクレードにいることです.彼らのカギ刺は不安定で,他のカギ刺とは違うなと思っていたので,なるほど納得の結果です.もう一つ注目したのは先に記事にしたCumarinia が今回の分析でも一属一種を守り抜きそうなことです.クマリニア君やるねーと感心しました.

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金鯱の立ち位置その2

 昨日の金鯱の立ち位置の検討は,趣味家にとっては一大事のように見えますが,分類学者にとってみればなお検討中のサボテン科の再構成の一つです.この流れでエキノカクタスがさらに詳しく再検討されている研究を紹介しておきます.この研究では従来エキノカクタスとされる6種を全て揃えて,葉緑体DNAの4つの部位,ゲノムDNAのベタレイン合成系の2遺伝子,及び42項目の形態比較を元に系統分類を試みたかなり充実した研究です.
立ち位置2ー②2022-2
 彼らの結論の重要な点の1つ目は,金鯱はエキノカクタスには含まれないが,Kroenleiniaを採用するにはなお慎重な検討が必要だと考えられるとしていること.なお2016年のHuntのカクタスチェックリストでもKroenleiniaはまだ採用されていません.2つ目は,アストロフィツム,エキノカクタス,ホマロセファラは共通の祖先を持つ植物群であることは間違いない.しかしエキノカクタスに含まれるのは太平丸と巌だけであり,神竜丸,大竜冠は綾波とともにホマロセファラ属とするのが適当であるとしていることです.
立ち位置2ー③
 うーんなるほどねと思わせる結果です.趣味家としては,神竜丸,大竜冠がエキノカクタスではなくなるのはちょっと寂しい気がするのですが,昨日書いたように大竜冠は大竜冠であって植物そのものは別になくなるわけでも,価値が下がるわけでもありません.綾波と大竜冠を並べてみると,よう兄弟よろしく!と言っているようです.
立ち位置2ー②2022
 さらに余談ですが,結果の示すところでは太平丸・巌とアストロフィツムが相当近いことにふーんと思ってしまいました.

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金鯱の立ち位置その1

 金鯱の属名が変わったんだってね,という「今更話」を最近聞きました.ちょっと整理しておこうと思い,簡単に経緯を書いておきます.2014年にTaxonomy of the Cactaceaeを著したJoël Lodéは,金鯱をKroenleiniaという新属に置くことを提唱しました. 
立ち位置1ー③2022
 その根拠は,それまでの幾つかの分子生物学的研究により,金鯱が他のエキノカクタスの種よりフェロカクタスのいくつかの種に近いことが示されたことに端を発します(Butterworthら,Systematic Botany 27:257-270 (2002)など). さらに詳細な検討がVázquez-Sánchezら(Systematics and Biodiversity 11:103-116(2013))によりなされ,改めて金鯱はフェロカクタスに近いことが示され,さらに彼らは踏み込んで従来のフェロカクタス,グランデュリカクタス,レウクテンベルギア,ステノカクタス,金鯱,テロカクタスまでを共通の祖先から進化した植物群とし,新たな証拠が出るまでは全てをフェロカクタスとすることを提唱しました.こうした議論を踏まえ,金鯱がエキノカクタスからは外れることの正当性と,なおフェロカクタスとは異なる点もあることからJoël Lodéは金鯱をKroenleinia grusoniiという1属1種にすることを提唱しました.つまりこうした案が提唱されているわけで,決着が着いたわけではありません.
立ち位置1ー①202
 なおこの議論の中で金鯱の成立においてフェロカクタスとエキノカクタスが関わっていて,金鯱が両者の雑種起源である可能性が示されたとされています.これは母系遺伝する葉緑体DNAの分析によると金鯱はフェロカクタスと近いことが(つまり祖先はフェロカクタス)示される一方,植物の形質を見るとエキノカクタスに近い面もあるからです.異なる種の交配により新たな種が成立することは生物進化においてしばしば見られることです.ここで誤解してはいけないのは,金鯱が雑種起源であるということが,あたかも今あるフェロカクタスの何かとエキノカクタスの何かとの雑種であるという意味では決してないことです.
立ち位置1ー②
 なお彼がCASSAで会員向けにこの辺りの説明を優しく話をしているのを(taxonomy of the cactaceae とjoël lodeでググると)YouTubeで見ることができます.最近の分類の大括り化を説明した上で,講演の最後に,学名が変わっても慌ててラベルを変える必要のないこと,今使っている学名(名前)はその植物を示すものであり,第一植物はそんなこと(つまり自分の学名)などに関心はなく,あなた方もそうかも知れない.と締め括っています.その通りだなと思いました.

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プロフィール

さぼちゃんだいすき

Author:さぼちゃんだいすき
サボテン少年でした.

2010年,30年数年ぶりにサボテンに復帰.

2020年末,長年の夢だった栽培場を開設.

第二の人生は,サボテン中心に生きることを決意.

残された時間は,心からサボテンを楽しむ事にした.

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